ハワイで鍵っ子はありえない
ALOHA! ホノルル在住の森出じゅんです。
皆さんにとって常夏ハワイのイメージ…はいかなるものでしょうか? きっと白砂のビーチに青い空、椰子の木陰で奏でるウクレレ、人々の笑顔、また笑顔という、楽園そのもののイメージではないでしょうか。
確かにハワイは人気リゾートであり、世にも美しい島なのですが…。それでもやはり、ここはアメリカ。治安の面で「世界一安全な国、日本」とは比較にならないのは、言うまでもないでしょう。さらに日本の皆さんに知っておいていただきたいのが、ハワイ州には「Endangering the welfare of a minor」 (未成年の福祉を危険にさらした罪)という罪があることです。これは端的にいえば、子供を危険な状態に陥れた親を罰する法律。
別にそれは子供を高速道路の入口に置き去りにした…などという極端な行為を指すのではありません。たとえば家や公園で小さな子供だけにしたり、プールで一人で遊ばせたりという行為だって、罪に問われることがあります。そう、ハワイでは基本的に親が常に子供に付き添わなければいけないわけです。
ハワイでの法律上の未成年は17歳以下ですが、一般的に中学生ぐらいまでは親の見守り義務があり、日本でいう鍵っ子状態はハワイではタブー(なのでアメリカではベビーシッターを雇う習慣が発達したのですね)。子供を置いて夜、親が食事やカラオケに出かける。また小学生のお姉ちゃんが幼稚園児の弟を体操教室に連れて行く…などという構図も、ハワイではありえないわけです。そのため登下校にも、親が付き添うのが基本(車での送迎が大半です)。ハワイには集団登校のようなシステムもなければ、アメリカの映画やドラマで見るようなスクールバスもないため、親への負担がかなり大きいのが現実です。
ホテルに子供を置き去りにして逮捕された観光客
具体的に私がハワイで見聞きした「未成年を危険にさらした罪」の事例では、ホテルの部屋に子供を残して出かけた親が逮捕された事件があります。子供が泣き叫んでいるのを不審に思った清掃スタッフが部屋で子供を見つけ、警察に通報したとのこと。またホテルのロビーで親が電話をかけている最中、離れたエリア(ただし同じロビー内)に子供を一人残していたので、警察が呼ばれた例もあります。
私の目の前でも、以前こんなことが…。ショッピングセンターの玩具店に2人の子供を残して買い物に出かけた母親がおり、警察が呼ばれたのです。店に戻って来た母親を警察官が詰問している場面に遭遇したのですが、何でもおかしな人が店内で子供2人を付け回していたため、店が通報したとのことでした。
ただし子供が危険な目に遭って初めて逮捕につながるわけではなく、子供を危険な状態に置いたと警察が判断すれば罪は成立する点が、この法律の注意すべき点なのです。前述のホテルでの逮捕例がその好例でしょう。私の住むコンドミニアムでも、「中庭で子供だけを遊ばせてはいけない」という規則があります。
…と、今回は少し辛口な内容になりましたが、近年注目を集めている親子留学を考える上で、アメリカのこういった現状を知っておくのも大切かもしれません。実際、2人の子供の送り迎えを中学、時に高校まで続けるのは、私にとってはものすごく大変な経験だったことも、ここで告白しておきましょう。
【著者プロフィール】
森出じゅん
横浜出身。日本で業界紙記者→フリーライターとして活動した後、ハワイに引っ越し。ホノルルで現在の夫と出会い、結婚。今年21歳になった息子と19歳の娘を持つ母親でもある。現在、書籍のほか日本のフラ雑誌、ハワイ専門誌などに執筆中。英語&ハワイ語辞書を片手に、ハワイからニュースを発信している。