ファクタリングは、迅速に資金繰りを改善できる手段として活用されていますが、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類が存在します。
それぞれの方式で仕組みが異なるため、利用を検討する前に理解しておくことが重要です。
今回は、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の各方式を詳しく説明し、また、類似のスキームを持つ「売掛債権担保融資（ABL）」との相違点についてもご紹介します。
ファクタリングの利用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
ファクタリングは資金調達の一手段
ファクタリングとは、自社が保有する売掛債権（売掛金）をファクタリング会社に譲渡し、入金予定日よりも前に資金を得る方法です。
売掛金は商品やサービスを提供した後、取引先から一定の期間後に支払われるため、「売上はあるが現金が不足している」という状況に陥りやすいです。
最悪の場合、黒字であっても倒産のリスクがあります。
しかし、ファクタリングを利用することで、予定より早く資金を回収でき、資金繰りの悪化や黒字倒産を防ぐことが可能です。
以下では、ファクタリングを含む資金調達の方法をご紹介します。
デットファイナンス
デットファイナンスとは、企業の負債（デット）を増やして資金を調達する手法です。
具体的には、銀行などの金融機関からの借入れやビジネスローンの利用、日本政策金融公庫からの融資などがあります。
デットファイナンスは、資金の提供元が多岐にわたり、利息による節税効果も期待できます。
一方で、利息付きの元本返済義務が生じるだけでなく、自己資本比率の低下により信用力が下がる可能性がある点に注意が必要です。
金融機関からの融資
資金調達の中で最も一般的なのが、金融機関からの融資を受ける方法です。
しかし、審査に数週間を要するため、急ぎの資金調達には不向きと言えるでしょう。
ビジネスローン
ビジネスローンは、民間の銀行や消費者金融から資金を借り入れる方法です。
審査が比較的緩やかで、最短即日での融資が可能な場合もあります。
また、多くの場合、担保や保証人が不要で利用しやすいのが特徴です。
しかし、金利が高めに設定されていることが多く、長期的な利用には適していないでしょう。
日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫から資金を借り入れる方法です。
日本政策金融公庫は、財務省が管轄する政府系金融機関です。
主な対象は中小企業や小規模事業者であり、民間金融機関よりも低金利・長期間の返済が特徴です。
比較的、融資が受けやすく利用しやすい傾向にあります。
エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは、企業の自己資本（エクイティ）を増やして資金を調達する方法です。
具体的には、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資、公募増資などがあります。
金融機関を介さないため、審査が不要であり、調達した資金の返済義務もありません。
その一方で、出資者から経営に関する助言を受けることがありますが、経営の自由度が制限される可能性があります。
また、配当金の支払い義務も生じます。
ベンチャーキャピタルからの出資
未上場のベンチャー企業が投資会社やファンドから出資を受ける方法です。
豊富な経験と知識を持つベンチャーキャピタルからのアドバイスが得られるだけでなく、資金調達のスピードも速い傾向にあります。
ベンチャーキャピタルは、出資した企業が上場やM&Aを行った際に株式を売却し、利益を得ます。
しかし、全ての企業が上場やM&Aを達成できるわけではないため、ハイリスク・ハイリターンな投資となります。
利用する際は、事業の将来性や戦略を明確かつ魅力的に伝えることが重要です。
個人投資家からの出資
個人の投資家から資金を調達する方法です。
ベンチャーキャピタルと同様に、上場やM&Aの際に株式を売却して利益を得ます。
個人投資家は意思決定が速く、資金調達が迅速に行えることが多いです。
しかし、出資額が比較的小さい傾向にあります。
公募増資
広く株主や投資家を募集して出資を募る方法です。
多くの企業や投資家から資金を集めることで、大規模な資金調達が可能です。
しかし、配当金のコストが増えるだけでなく、新規株主の増加により議決権が希薄化するリスクがあります。
アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、企業の資産（アセット）を資金化して調達する方法です。
具体的には、手形の割引や固定資産の売却、ファクタリングなどがあります。
他の手段と比べて、資金調達までの期間が短いのが特徴です。
ただし、長期的には利益が減少する可能性があります。
手形の割引
約束手形を金融機関に買い取ってもらい、早期に資金化する方法です。
比較的、手数料が低く、資金調達のスピードが速いです。
しかし、万が一、売掛先が倒産し手形が不渡りとなった場合、資金を返済する義務が生じます。
固定資産の売却
土地や設備、商標権などの固定資産を売却して資金を得る方法です。
売却により維持管理費の削減も期待できます。
ファクタリング
売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、入金予定日より前に資金を得る方法です。
償還請求権なしの契約が一般的で、売掛先が倒産しても利用者が弁済する必要はありません。
ただし、手数料がかかるため、売掛金を全額受け取ることはできません。
2社間ファクタリングの仕組み
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の間で契約を行う方法です。
売掛先へ請求書を発行した後、ファクタリング会社に売掛債権の買取審査を依頼します。ファクタリング会社は、売掛先の信用力を調査します。
審査に通過すると、買取条件や契約内容が提示され、合意すれば契約を締結します。
利用者は売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額が支払われます。
売掛金の支払期日に売掛先から入金があったら、利用者はその金額をファクタリング会社に支払います。
この方式では、売掛先はファクタリングの利用を知りません。
そのため、手続きが迅速で、取引関係に影響を与えない利点があります。
2社間ファクタリングのポイント
では、2社間ファクタリングの要点を見ていきましょう。
売掛先は取引に関与しない
2社間ファクタリングでは、売掛先への通知や承諾が不要です。
そのため、売掛先はファクタリングの存在を知らずに取引を続けます。
債権譲渡登記が必要な場合がある
2社間ファクタリングでは、法的な権利を明確にするために債権譲渡登記が必要となることがあります。
一部のファクタリング会社では、これを省略できる場合もあります。
利用者が売掛金を回収する
売掛先はファクタリングを知らないため、通常通り利用者に支払いを行います。
利用者は回収した資金をファクタリング会社に支払います。
オンラインで手続きが完了する場合も多い
最近では、オンラインで契約が完結するサービスを提供するファクタリング会社も増えています。
3社間ファクタリングの仕組み
3社間ファクタリングは、利用者、ファクタリング会社、売掛先の三者で契約を行う方法です。
利用者が売掛先へ請求書を発行し、ファクタリング会社に買取審査を依頼します。
審査通過後、売掛先に債権譲渡の通知を行い、承諾を得ます。
三者間で契約を締結し、利用者は売掛債権をファクタリング会社に譲渡します。
ファクタリング会社は手数料を差し引いた金額を利用者に支払い、売掛先は期日にファクタリング会社へ直接支払います。
この方式では、売掛先がファクタリングの存在を認識しています。
手数料が低くなる利点がありますが、売掛先の協力が必要であり、資金繰りが悪化していると誤解されるリスクもあります。
3社間ファクタリングのポイント
次に、3社間ファクタリングの要点を確認しましょう。
売掛先の協力が不可欠
売掛先からの承諾が得られなければ、この方式は利用できません。
事前に協力を依頼し、理解を得ることが重要です。
債権譲渡通知を行う
法的な手続きとして、売掛先に債権譲渡の通知と承諾を求めます。
これにより、債権譲渡登記が不要となります。
ファクタリング会社が回収を担当
売掛先はファクタリング会社に直接支払いを行うため、利用者は回収業務から解放されます。
オンライン契約は原則不可
売掛先との対面や郵送での手続きが必要なため、オンラインでの完結は難しいです。
保証型ファクタリングの仕組み
保証型ファクタリングは、資金調達ではなく、売掛債権の貸し倒れリスクを回避するためのサービスです。
利用者がファクタリング会社に申し込み、売掛先の信用調査が行われます。
審査通過後、契約を締結し、保証料を支払います。
売掛先からの入金を待ち、期日に入金があればスキームは完了です。
万が一、売掛先からの入金がなければ、ファクタリング会社が利用者に代わって売掛金を支払います。その後、ファクタリング会社が売掛先から回収します。
ファクタリングと類似する「売掛債権担保融資（ABL）」との違い
ファクタリングと似た資金調達方法として「売掛債権担保融資（ABL）」があります。
ファクタリングが売掛債権を売却して資金を得るのに対し、ABLは売掛債権を担保に融資を受ける方法です。
以下に、両者の違いをまとめます。
契約形態の違い
ファクタリングは「売買契約」であり、ABLは「金銭消費貸借契約」です。
ABLでは、企業の信用力が重視され、審査に時間がかかる傾向があります。
担保対象の違い
ファクタリングの対象は売掛債権のみですが、ABLでは車両や設備、在庫など、不動産以外の資産も担保にできます。
コストの違い
ファクタリングの手数料は、2社間で8％〜18％、3社間で2％〜9％が相場です。
ABLの金利は2％〜10％が一般的ですが、法定上限は年利20％です。
審査対象の違い
ファクタリングは売掛先の信用力が審査対象で、ABLは申し込み企業の信用力が重視されます。
資金調達までのスピードの違い
ファクタリングは最短即日で資金調達が可能ですが、ABLは審査に時間がかかり、資金調達までに約2週間を要します。
まとめ
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは、それぞれ異なる仕組みと特徴を持ちます。
手数料や売掛先への通知の有無など、自社の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。
